地方移住はやめた方がいい? 勢いで長崎に来た私が、暮らしてわかった「理想と現実」
「地方移住、あこがれるけれど、実際どうなんだろう?」
そんな相談をよく受けます。SNSを見れば、自然の中でのびのび暮らし、おいしいものを食べて、“人間らしい生活を取り戻した”という投稿がたくさん流れてきます。
でも、本当にそんなにうまくいくのか。いいことばかりじゃないんじゃないか。
そう思うのは、とても正直で当たり前な感覚だと思います。
この記事では、実際に長崎へ移住した私の「理想」と「現実」を、できるだけ飾らずに書きます。しかも私は、ほとんど準備らしい準備をしないまま、勢いで来てしまったタイプです。だからこそ、「先にやっておけばよかった」ことも、失敗談といっしょに書いていきます。
私は移住を勧めるつもりも、やめなさいと言うつもりもありません。ただ、「実際のところ」を知りたい人のために書いてみますね。あくまでも私個人の感想なので、いろいろな方のお話を聞いて熟考してから移住を決めることが大切です。
この記事でわかること
- 移住してよかったこと
- 実際に暮らして感じた、5つの「現実」とその対策
- 移住をやめたほうがいい人
- 移住前に確認しておきたいチェックリスト
まずは、移住してよかったこと
批判的な話ばかりではつまらないので、最初に「来てよかった」と感じていることから。
時間の流れが変わった
都市部で暮らしていた頃、私はいつも何かに追われていました。電車、人混み、仕事のスピード。気づけば一週間が終わっていて、「今日一日をきちんと過ごせた」という達成感や実感が薄かった気がします。
長崎に来てから、追われるような感覚がなくなり、ゆったり過ごせているような感覚があります。
朝、窓を開けると坂の向こうに海が見える。スーパーへ向かう途中、知らないおじさんに「きょうも暑かね」と声をかけられる。夕方、ふらりと外へ出たら、港の上に広がる夕焼けがあまりにきれいで立ち止まってしまう。
そんな「何でもない時間」が、毎日の中に自然と増えていきました。
人が親切で食べ物がおいしい
道を尋ねると、「同じ方向だから」と、そのまま案内してくれる方がいます。和食、中華、洋食と食の選択肢も幅広く、早くから海外に開かれていた街らしい食文化が、暮らしの中に自然に溶け込んでいます。
そして、急な坂を登り切って振り返ったときの景色は、ここでしか見られないものだと思います。

では、現実はどうだったか
ここからが本題です。移住して最初に感じた「あれ?」を、正直に書いていきます。
現実① 思った以上に「不便」
移住前は「不便さも楽しめるはず」と思っていました。でも、実際に暮らすとその不便さがちょっとストレスになります。
買いたいものがすぐ手に入らない。病院まで距離がある。バスの本数が少なく、タイミングを逃すと次までかなり待たないといけない。
【私の失敗談】 引っ越して間もない頃、用事を済ませて、あとはバスで帰るだけ、という日がありました。時刻表を確認せずにバス停に向かうと、目の前で行ってしまったのです。次の便まで一時間近く。都市部なら「次の電車に乗ればいい」で済んだのに、ここでは予定が丸ごとずれてしまいます。ベンチに座りながら、時刻表を見てから出るという、あたりまえのことを習慣にしなければいけないのだと痛感しました。
一つひとつは小さなことでも、毎日積み重なると結構ストレスになります。「不便も味わい」と思える日もありましたが、「しんどい」と感じることの方が多かったような気がします。交通の便は住む場所によって違ってきます。その場所が気に入って住むことにしたのならいいのですが、私のように勢いでやって来ると準備不足もあって、「考えていたのと違う」場所に住むことになります。
先にやっておけばよかったこと
- 住む場所を決める前に、最寄りのバス停の時刻表を見て、朝・昼・夜の本数を確認する
- スーパー、病院、駅までの距離だけでなく、「坂の登り下り」もあわせて確認する
- 買い物は、まとめ買いや宅配サービスの対応エリアも調べておく
現実② “自然の中でのんびり”は半分本当
自然豊かな場所でスローライフ。これは確かにそうなんですけれど、ただし、自然が近いということは、自然の厄介な面も近いということ。
台風の進路に敏感になる。虫は出る。湿気が多い。長崎の夏の蒸し暑さは、都市部の「暑さ」とは少し違います。
【私の失敗談】 移住して初めての台風のとき、ニュースで「進路に注意」と言っているのを、どこか他人事のように聞いていました。風が強まってからあわてて外の物を片づけ、買い物にも行けず、家の中にあるもので何とかしのぐことに。「備える」という感覚が、私にはまったくなかったのです。それ以来、天気予報のたびに、備えが足りているかを確認するようになりました。
のんびりした空気は本当なのですが、「自然と共存する覚悟」も必要です。
先にやっておけばよかったこと
- 台風に備えて、水・食料・懐中電灯・モバイルバッテリーなどを、早めに用意しておく
- 住む予定の地域のハザードマップを、自治体のサイトで確認する
- 梅雨や夏のために、除湿機やカビ対策グッズを用意しておく
現実③ 人のつながりは温かくて、少し重い
地方の人間関係は、都市部よりも距離が近いです。
特に街の中心からはずれた地域に住んでいる私のところは、近所の方がおすそわけを持ってきてくれたり、困ったときに助けてくれたり。その温かさは本当にありがたいものです。
一方で、地域の行事やつきあいは密です。「参加するのが当たり前」という空気があることも。
【私の失敗談】 私は最初、その距離感がうまくつかめませんでした。おすそわけをいただいても、お礼をどう返せばいいのかわからない。行事の案内が来ても、どこまで参加すればいいのかわからない。都市部の感覚で「お邪魔になってはいけない」と距離を置いていたら、それがかえって「よそよそしい人」に見えていたのではないかと、あとから不安になりました。
人と関わるのが好きな人には天国。一人の時間を大切にしたい人には、最初は少し重く感じるかもしれません。
先にやっておけばよかったこと
- 移住が決まったら、最初にその地区の区長(自治会長)にあいさつに行く。あいさつ回りの範囲も、区長に確認しておく
- 「がっつり地域に入りたいのか」「ほどよい距離感でいたいのか」を、自分の中で決めておく
- おすそわけには、小さなお礼を返す、「ありがとう」を直接伝える、といったことを、気負わずに続ける
現実④ 収入が下がるリスクは本物
地方で仕事を変えると、給与水準が下がるケースが多いです。
生活費が安くなる部分もありますが、郊外で公共交通機関が少なく、車が必須になるとローン・保険・ガソリン代などが毎月かかります。「家賃が安くなった分、車の維持費に消えた」という話もよく聞きます。
【私の失敗談】 私自身は、「地方は生活費が安いはず」と、なんとなく思い込んで来てしまいました。ところが、暮らし始めてみると、移動にかかるお金、思ったより見つからなかった仕事。頭の中の「安く暮らせるはず」という計算は、あっさり崩れました。通帳を見るたびに、「ちゃんと数字を出してから来ればよかった」と思ったものです。
収入が減っても幸せだと思える人もいれば、私のように「想定外にお金が足りない」と後悔する人もいます。移住前に生活にかかる数字をしっかり計算することは、とても大切ですよ。
先にやっておけばよかったこと
- 家賃だけでなく、車の維持費、光熱費、ネット代まで含めた「毎月の支出」を、移住前に書き出す
- 「半年分の生活費」を確保してから動く
- 仕事のめどを、できるだけ移住前につけておく
- 自治体の移住支援制度(引っ越し費用の補助、家賃の補助、就職支援、移住支援金など)を、先に調べておく
現実⑤ 孤独を感じる瞬間がある
これはあまり聞かない話かもしれませんが、友人や家族と離れると、最初は解放感があります。でもしばらくすると、ふとした瞬間に「誰かと話したい」と思うことがあります。
【私の失敗談】 私の場合は、夜、静かな家で、ひとりで夕食を食べ終えたあと、ふと「今日、誰とも話さなかったな」と思ったことがありました。窓の外には、坂の下の街の灯り。きれいなはずの景色が、その日はなぜかとても暗く感じました。
地域の人とはつながれても、心の深いところで話せる人が近くにいない、寂しい、そんな感情が生まれることもあります。今はオンラインで友人とつながれる時代ですが、それで全部が補えるわけではない、というのが正直なところです。
先にやっておけばよかったこと
- 移住前に、友人や家族と「定期的に話す約束」を決めておく
- 最初の数か月で、地域の集まりや教室などに、一つだけでも顔を出してみる
- 「話せる人」を一人でも見つけることを、最初の目標にする

それでも「来てよかった」と思う理由
ここまで読むと、「やっぱり移住はやめたほうがいいのかな」と思う人もいるかもしれません。
それでも私は、長崎に来てよかったと思っています。
理由は一つ。自分がどう生きたいかを考える時間が増えたから。
都市部では、流れに乗っていれば毎日が勝手にどんどん流れていきました。長崎では、不便な分「選ぶ」回数が増えます。今日どこへどうやって行くか。何を食べるか。誰と話すか。
その小さな選択の積み重ねが、「自分の暮らし」を自分の手で作っている感覚につながっています。
キラキラ輝いてはいないけれど、でも、確かに自分の人生を歩いている実感があります。それが、今の暮らしのいちばん気に入っているところです。
「移住をやめたほうがいい人」は正直いる
少し厳しいことを言うと、こういう人は、移住前にもう一度よく考えたほうがいいかもしれません。
- 「なんとなく現実から逃げたい」が理由になっている人 → 場所が変わっても、自分は変わりません。
- 仕事や収入のめどが全くない人 → お金の不安は、暮らしの不満に直結します。
- 一人でいることが苦手なのに、知り合いゼロの土地へ行こうとしている人 → 最初の数ヶ月は、思ったより孤独です。
【私の反省】 実は私自身、この三つのどれにも、少しずつ当てはまっていました。「ここから逃げ出したい」という気持ちもあったし、仕事のめどもないまま来ましたし、知り合いのいない街で、最初の数か月は想像以上に心細かったです。それでも今、ここで暮らしていられるのは、運がよかったのだと思います。だから、同じ道はお勧めできません。
移住したからといって、「答え」が出るわけでも、「逃げ場」ができるわけでもありません。移住は生き方の選択肢のひとつです。それを理解したうえで真剣に考え選ぶなら、きっとうまくいくと思います。
移住前に確認しておきたいチェックリスト
私が「先に確認しておけばよかった」と感じたことを、まとめます。
- 仕事のめどはついているか(リモート継続、求人の確認、窓口の活用)
- 半年分の生活費を確保しているか
- 「譲れない条件」を3つに絞ったか
- 移住先に、できれば1週間以上滞在してみたか(お試し移住など)
- 病院、スーパー、バス停までの距離と、道の坂の具合を確認したか
- 車の運転に慣れているか(慣れていなければ、事前に練習する)
- 住む住所で使えるネット回線を確認したか
- 自治体の移住支援制度を調べたか
- 家族やパートナーとしっかり話したか
- 「うまくいかなかったとき」に戻る準備(お金・住まい)があるか
それぞれの項目の詳しい話は、他の記事に書いています。
まとめ
地方移住の「理想と現実」を書きました。
いいことも、しんどいことも、どちらもあります。「やめたほうがいい」とは思いませんが、「誰にでもおすすめ」とも言えません。
大切なのは、自分がどんな暮らしをしたいのか、ちゃんと考えてから動くこと。そして、「えいや」の前に、少しだけ立ち止まること。
この記事が、そのヒントになればうれしいです。
長崎での暮らしのことは、これからもゆっくり書いていきます。
